今回は、今更ですが改めてステンレスについてのお話です。
弊社はステンレス製のワイヤロープメーカーでありますが、皆さんはステンレスについてどれほどご存じでしょうか。
身の回りのものでいうと日常的に使っているフォークやスプーンなどの食器類、洗濯機ドラム、精密機器部品などはステンレスでできているものも多いです。
一般的にステンレスというと、皆さんの中には”錆びない“という印象をお持ちの方がいるかもしれません。しかし正確には”錆びない“ではなく”非常に錆びにくい“が正解です。
ステンレスは英語でStainless Steelで直訳するとステンレス鋼となります。
⇒Stain[汚れる、錆びる]がless[~しない]でステンレスです。
ステンレス鋼は鉄を主成分(50%以上)としクロムを10.5%以上添加することで非常に錆びにくくなった合金です。そのクロムが酸素と結合することで表面に不動態皮膜というものが生成され、それによって錆びを防いでおり、その不動態皮膜は数ナノメートル程とかなり薄いですが、大変強靭で傷ついても周囲の酸素と結合し瞬時に自動的に再生されますので、いつまでもステンレスを美しく保つことができます。
しかし特定の条件下では腐食(錆び)が起こり進行する事がありますので、使用環境には注意が必要です。
一口にステンレス鋼と言っても成分の含有比率や処理方法を変える事で様々な異なる特性を持ちます。そのステンレス鋼を大きく分類すると『オーステナイト系・フェライト系・マルテンサイト系』の3種類に分けられます。
それぞれの代表例としてオーステナイト系ではクロム18%-ニッケル8%のSUS304やクロム18%-ニッケル8%-モリブデン2.5%のSUS316、フェライト系ではクロム18%のSUS430、マルテンサイト系ではクロム13%のSUS410があります。
また、上記以外にもステンレス鋼のJIS規格としては100種類以上もの種類があり、弊社で使用している鋼種は主にオーステナイト系のSUS304、SUS316Lの2種類となっております。
ちなみにJIS記号のSUSは、鋼(Steel)+用途(Use)+ステンレス(Stainless)の頭文字です。
それぞれの簡単な特徴としては、SUS304(18cr-8Ni)はステンレス製品を作る上で一番汎用的な鋼種で、耐食性、耐熱性、機械的性質に優れています。身近なところではキッチンのシンクなどに使われています。
また、SUS316L(18cr-12Ni-2.5Mo-低C)は炭素を極度に抑えた材料で、SUS304に比べ耐食性、耐酸性、耐粒界腐食性に優れております。こちらは医療機器などにも使用されている高級ステンレス素材です。
今回はステンレスの基本的なことから少しだけ専門的なところをお話しました。
次回の後編もよろしければご覧下さい。